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榊原英資のプロフィール

【榊原英資 さかきばら・えいすけ】日本の官僚。経済学者。東京大学経済学部を卒業し、大蔵省に入省。その後ミシガン大学で経済博士号取得。財務長官などを経て、慶應義塾大学グローバル・セキュリティー・センター所長。青山学院大学教授。国際金融論を専門としている。大蔵省時代から経済学の専門書を執筆。1995年の超円高を為替介入で鎮め、ミスター円という愛称で呼ばれる。

世界中で取引されている為替の量は一日150兆円を超えて200兆円くらいだといわれています。したがって為替当局といえども市場を支配する力はまったく持っていないのです。

GDP成長率、インフレ率と金利、経常収支、財政収支という四つの経済指標は最低限チェックしておく必要があります。これらの指標に大きな変化があれば、やがて為替相場に反映されます。ただ、反映されるとしても、その時期や現れ方は単純ではありません。

ある企業が発表した決算報告を記者会見で発表するとしましょう。大手企業の決算については、アナリストが事前に経済紙などに業績予測を発表するのが普通ですから、参加者たちも「おそらく業績はこのレベルだろう」と一定の予断を持って挑みます。そのとき、その企業が発表した決算報告がアナリストや記者たちの予測の範囲内であったときは、いくら良い業績であってもすでに織り込み済みの情報として受け止められ、株価が上がるようなことはまずありません。

企業決算が仮に悪くて損失を出した場合でも、その損失が市場予測よりも小幅であれば、株価が上がることもあります。為替市場もこれと同じで、予測との対比で新しい情報かどうかによって円高になったり円安に触れたりします。近年は政府の経済対策についても同じことが起きていて、せっかく新しい経済政策を打ち出しても、株価が上がるどころか、逆に下がってしまうという自体を繰り返してきました。

為替市場を予測することにまったく意味がないのかと言えば、そうではありません。予測という知的作業なくして為替市場に関わることは、とうてい不可能です。逆説的な言い方ですが、予測という大切な作業をする際には、何よりも「予測は当たらない」と認識しておくことが大切です。その上で、いま市場で一般的になっている予測を徹底的に再検証し、複数のリスクシナリオを書いてみるのです。

ヘッジファンドの動きが全体的な流行になってくると、同じファンドでも年金基金、それに投資銀行などが現れます。最後に日本の生保などの機関投資家が登場してくる。そのときには、ヘッジファンドはもう別の仕掛けに動いています。コンセンサス型の日本の組織では、耳寄りの情報をキャッチしても現場の判断で即応することはできません。リスクをとるには社内の同意が必要であるため、どうしても対応が遅くなってしまうのです。

為替市場もまた経済戦争の一種ですから、情報収集には人一倍の努力が必要です。市場では質量共に他人より多くの情報を持つものが勝つという鉄則があります。はっきりしているのは、情報のない者が負けることです。

市場では人と違う好みを貫けば、損をすることになります。市場で勝つということ、あるいは、儲けるということは、多くの人の好みに乗る、あるいはそれを作り出すということなのです。つまり、(ケインズの言う投資の)美人投票の結果を読んで、自分も勝ち馬に投票するということなのです。そして、本当に儲けるためには、安いときに買って、高いときに売らなくてはなりませんから、みんなが美人だと思っていなかった人を早いうちからつかまえて、みんなを説得して美人投票に勝たせ、はやいうちに次の美人をつかまえるのがいちばんいいのです。

市場では他の市場参加者の好みを理解して、大きな流れ、トレンドに外れないようにしなければならないのです。しかし、好みは主観的でしかも流行があります。トレンドをいつもうまく当てるのは、決してそんなに簡単なことではありません。

情報の相互依存性は、為替市場においても大切な考え方です。相互依存性は一回きりではなく、何度も繰り返されることが特徴です。こちらで発信した情報によって相手の行動パターンが変わる。それがフィードバックされてこちらに返ってくる。こちらもまた判断を改める。このような複雑な相互依存性の中で新しい情報を発信するときは、よほど相手の反応を見極めておかないと、効果が半減してしまうわけです。

資産運用をする人は、必ず複数のリスクシナリオを持ってリスク回避を図っています。たったひとつの運用方法に全財産を委ねるのでは、危険が大きすぎるからです。分散投資により資産の安全な運用を図りながら、一方で若干のリスクもとっていく。これも「予測は当たらない」という鉄則を前提にしている話なのです。

情報がない人が作る陰謀説。結局のところ陰謀説は推理小説的な面白さはあっても、実情は中途半端な情報しか持っていない人たちが、苦し紛れに描く粗雑な市場解釈物語にすぎないと言えます。知的態度としては、真実の探求をどこかで捨ててしまった退廃的なものを感じざるを得ません。

市場では失敗は必ず起きます。神様以外に100%の成功はないのです。市場での失敗と向き合うことは、思考のトレーニングにもなるし、また、本来の意味での経営やガバナンスの基本にもなります。失敗することは当然だと考え、そこから新しい情報を得て新しい対応の仕方を常に学んでいく、そういう態度をとらなければ結局のところは競争に負けていくことになります。

日本の政治家や官僚にとってさらに問題なのは市場というものがファンダメンタルズだけでなく、市場参加者たちの複雑な心理や思いが相互に影響し合い、ソロス流に言えば相互依存性によって決まっていくことを理解している者が、きわめて少ないことです。

為替市場は情報の相互依存性が最も発揮される場です。最もグローバルでオープンな市場なのです。誰かがある情報に注目すれば、その行動が変わり、それがまた新しい情報を担ってフィードバックされていく。それを繰り返していくうちに一つの均衡が生まれる。そうするとまた新しい情報が入って近郊が崩れふたたび相互作用を繰り返していく。その無限の連鎖運動が為替市場の本質といえるのです。

市場の取引の第一線に立つディーラーたちは、自分の勘と運動神経を頼りに相場の世界に生きているところがあります。市場は生きています。生きている、あるいはいつも変わっていく市場を相手にするのですから、勘と運動神経はディーリングの必須条件なのです。ディーラーと呼ばれる人たちはほとんどが三十代の若さです。

日本社会のメンタリティを考えるとき、しばしばこの国は社会主義国か?と疑いたくなることが少なくありません。私は市場がすべてだという市場原理主義に対しては批判的です。それでも、これだけ市場経済化が進んでいるのに、政治家や官僚たちの市場に対する意識が必ずしも高くないのは、きわめて不自然な感じがします。

あるディーラーは為替市場での売買を決定するものは「勘が50%、チャート20%、ファンダメンタルズ30%」と言っていました。私の経験でも「何かがおかしい」といった勘が働くことがあります。万能の神ならば、すべての情報を瞬時に論理的に分析して、サッと結論を出すことができます。しかし、人間の知恵は常に不十分で、他の人がどう反応するかを読みながら行動するのです。そして、行動は速くなくてはいけません。

IMFはいわば国際的官僚組織です。私もIMFに4年間出向した経験がありますが、その当時の強い印象の一つは「大蔵省より官僚的なところがあるというのは驚きだ」というものでした。私は、出向でしたが、多くの職員は終身雇用で、母国に帰りたいという人はどちらかというと少なく、一生ワシントンで、IMFで暮らしたいという人が多数派です。仲間意識が強く、IMF自体が一つの閉鎖的共同体なのです。

これだけ自由な市場で、これだけ多数の人が参加している上に、世界のあらゆる情報が反映している為替レートは、誰にも予測することはできません。どこかの国でクーデターが勃発したり、大災害が起きるだけですぐ変わるのです。為替レートを予測できると思うほうが間違っている、としか言いようがありません。

一般的に為替介入だけではなくて、政策の効果を最大限にするためには次の三つの要素が重要であると考えられます。第一に政策をどのタイミングで発表するか。第二に誰がどういう形で発表するか。第三は政策の内容。

伝説の投機家ソロスでも、相場の世界では百戦百勝というわけにはいきません。98年のロシアで起きたロシア・ルーブル危機では、大変な損失を被っています。ソロスは自分の身をもって誤謬性と相互作用性の両方を体験したということでしょう。

なぜジョージ・ソロスは、金融市場の怪物にのし上がったのか。私の見るところ、ソロスは他のトレーダーにはない独特の市場観を持っています。それが成功を呼び寄せた最大の要因ではないでしょうか。誤謬性、相互作用性の概念、この二つは為替市場を読む上でとても重要なことです。出たとこ勝負、第六感で市場に挑むものが多い中でソロスは本質的な一つの哲学を持って市場に対峙していたのです。

為替市場はいまや地球規模に広がり、いつ誰が参加しているのか捕捉の使用もありません。誰にもコントロールできないもっとも自由な市場です。政府が介入すればある程度為替相場を支配できるという人もいます。たしかに通貨当局は巨額の資金を動かす市場参加者であることは間違いありません。強力な参加者ではあるけれど、全体の為替取引からすれば小さなものです。

為替取引は一種の情報ゲームです。情報をどれだけ持っているか、あるいは自分の持っている情報を新しい事態の出現によってどれだけ修正していくか、そしてそれを今度はどう発信していくか。現代のような高度情報社会では、為替市場に限らず政治や行政も含めて社会のあらゆる活動が情報ゲーム的な側面を持つ。その意味では、戦争もまた勝つか負けるか、命をかけた究極の情報ゲームといえます。

ヘッジファンドの真骨頂は、さまざまな政策の動きを他人より一歩先に読み取り、他のいろいろな情報と組み合わせて独自の分析を行い、他人より一歩早く市場でポジションを作って、リスクをとって、他人がやってきたときにうまく売りぬくという素早い決断と行動にあります。

為替市場についてまず知っておいていただきたいのは、為替相場がここの市場参加者のきわめて主観的な判断の集合によって決まっていくということです。ただ、主観的とは、主体的という意味でもないし、恣意的という意味でもありません。

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